▼ ボディーをオールラッカー塗装にする |
現在、車などの塗装では、ラッカーはウレタン系塗装と比べて塗装本来の目的である 「 保護 」 の能力が
劣るため新車の塗装では使用しない。 もっぱら一般人の DIY 向け塗料としての位置づけだ。
簡単に優劣を述べれば、ウレタン系は優れていて、ラッカーは劣る存在。
しかし、楽器の場合は全く逆。ラッカー塗装のほうが珍重される。
大量生産の安価モデル 〜 中堅クラスモデルなど大部分がウレタン系塗装で、一部の高級ブランド品や
名のあるビンテージモデルがラッカー塗装なのだ。
ギターは木材で出来ているから、もちろん木の保護だけを目的とするならばウレタン塗装のほうが上だ。
しかし、ギターはボディー部分の木の 「 鳴り ・ 響き 」 が音色を左右する。
ウレタン系塗料はその保護能力の高さゆえ、かえって楽器の鳴りの能力をも抑え込んでしまうのだ。
塗装する場合、木材本来の 「 鳴り ・ 響き 」 を引き出すにはラッカー塗料を薄く塗ってやるに限る。
…というワケで、既存のウレタン塗装をひっぺがして、新たにラッカー塗装することにします。
↑ まずは既存の塗装を丹念に削り落とす。 そして、深いキズや打痕などは木工パテを塗って補修。
↑ 「 との粉 」 を塗って木材の導管を埋めたあと、「 セラックニス 」 を吹いて目止めする。
セラックニスとは、バイオリンや高級クラシックギターに使われる非常に歴史の古い塗料。
木材本来の 「 鳴り 」 を妨げず、とても楽器に適した塗料だ。
これをラッカーシンナーで薄めてガンで吹き付ける。
そして、その上からラッカー系サンディングシーラーを吹き付けて塗装の下地を作る。
使用したのは 「 ワシン製 」 の物で、主成分はニトロセルロース系のラッカー。
↑ 1週間から10日ほど充分に硬化させてからサンディングシーラーをサンドペーパーで研ぐ。
研いで表面を平らにすることで、塗装が美しく仕上がるのだ。
ちなみに塗装作業は S-craft 社 に依頼。
皆さんご存じのように S-craft 社は車のショップですが、代表の宇山氏は基本的に造形師。
小さな何十分の一サイズの模型から実車のレーシングカーなどに至るまで、その守備範囲は広い。
様々な素材に関する知識、そして素材ごとの適切な塗装方法を身につけたプロ中のプロ。
ウレタン系だけでなくラッカー系塗料にも精通し、ギター塗装経験もある多才な職人。
知らない楽器屋に頼むよりも信頼できるし、腕も確かだ。
↑ 沢山ある塗装用ガンの中から、木材塗装に適した口径のガンを使用する。( 上の写真:左 )
ガンは試し吹きを繰り返して選出し、更に微調整を繰り返して最適の状態にしてから吹く。
このあたりが流石にプロだ。
基調となる色を平面部に薄く吹いたあと、エアブラシを使ってグラデーション処理。( 上の写真:右 )
もちろんこれも塗料は最小限に抑えて超薄塗り。
そしてこの時に大事なのは塗膜の均一化。グラデーションを入れても塗料の厚みが変わらないよう
最初から計算して吹き進めていくことが重要。
色付けの塗料はアクリル系ラッカーを使用。本当ならニトロセルロース系で全て揃えたかったが
なかなか市販のもので良い色が見つからなかったことと、一般的に発色の良さではアクリル系の
ほうが優れていることなどから、アクリル系をチョイス。
↑ 色調を微妙に変えながら陰影を付けていく。そしてクリアを薄く吹いて仕上げ完了。
なお、使用したクリアは楽器用として定評のある 「 玄々 」 のラッカークリアだ。
このクリアの成分はニトロセルロース系。
↓ こんな感じで塗り上がりました。このあと 1週間 〜 10日ほどおいてから磨き作業に入ります。
フォレストの特長的なシェイプを活かす、燃えさかる炎のようなカラーリング。
エアブラシによる陰影付けと木材本来の木目が融合し、炎のような雰囲気が非常に良いですね。
( 写真では微妙な繊細さや、実物の良さの半分も伝えられないのが残念です。。。 )
よくあるサンバースト系の色調ながら、独特の陰影付けで強烈かつ高級感溢れる逸品となりました。
これはもう芸術の域。いや、芸術そのもの。
見かたによっては、まるで業火の熱で溶ける金属か、溶岩を思わせるような色合い。
ビジュアル系として、これは大変素晴らしい出来栄えです。マジ素晴らしいのひと言につきます!
とりあえずこの色を 「 ブラッディー・フレイム・サンバースト 」 と名付けてみました。(^-^)v
( それじゃビジュアル系じゃなくて、どちらかと言えばメタル系だろっ!(笑) )
後日行う磨き作業が楽しみですね〜
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記事掲載日 2009.06/29